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北側にアンナプルナ連山が見渡せる絶好の場所なのだが、午後は雲が高く上ることが多く、この日もあいにく山群はすっぽり雲に覆われている。 集まってきた村の子どもたちのなかに、ひときわ目立つ軍帽をかぶった少年がいた。

「うちの父ちゃんは元グルカ兵で、手柄を立ててこの勲章をもらったんだぞ」といって、勲章をそっとポケットから取り出して見せた。 戦死したそうだが、少年は誇らしげに笑った。
フォークランド紛争のとき、イギリス軍の尖兵として参戦し、アルゼンチン軍と戦ったのではないだろうか。 父の形見を大切にする少年の、なんといじらしいことか。
涙をさそわれる一幕であった。 このあたりの住民はマガール族、グルン族が多い。
その昔、グルカ王朝時代に王様を守るために組織された、勇猛果敢なグルカ兵の子孫たちだ。 標高差が大きい段々畑で農作業に従事するから、足腰が丈夫で訓練すれば強い山岳兵になるのは当然のことだろう。

それに目をつけたイギリス軍が、第1次大戦後にイギリスの傭兵としたもの。 このあたりの村はグルカ兵の故郷といえるだろう。
学生たちはさっそく、シェルパたちを先生にして、ネパールの民謡と踊りの練習を始めた。 村人やポーターたちも加わって、まるで昼一間からお祭り騒ぎだ。

3日目。 早朝からざわめいている。
それもそのはず、雲1つない薄明かりの空にアンナプルナ山群の大パノラマが、眼前に広がっている。 まさに″神々の座″というにふさわしく、威圧されるような感じだ。
やがて陽光が峰々を美しく輝かせ始め、「なんという素晴らしい眺めだろう。 涙が出そう」と、感激して立ち尽くしている。
アンナプルナとはサンスクリット語で、「豊穣の女神」という意味で、その主峰(8091メートル)も南峰の右肩上に、わずかに頂上稜線をのぞかせている。 アンナプルナ山群は主峰を一峰として、高さの順に二峰から4峰まである。

もちろんそれより低いガンガプルナや南峰、ラムジュン・ヒマール、マチャプチャレなど数多いピークを含んでいる。 マチャプチャレが、どのピークよりも1段と高くそそり立って見えるのは、ぐっと近く、手前に位置するためだ。
はるか右(東)前方にはマナスル4山も、シルエットながらはっきりと望めた。 今日のコースはほとんどが下り道。
ネパールの国花ラリグラス(シャクナゲ)の、燃えるような赤い花を眺めながら、2時間足らずでカーレの村に着く。

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